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去年の大晦日、あるライブハウスで、JAMセッションが行われた。ご存じない方のために説明すると、通常は、プロが歌い演奏する場を、アマチュアのために開放してくれる、ありがたいイベントである。皆、思い思いの楽器を持参し、ボーカルをやりたい人は、いくつかの楽譜を持参する。 通常、Jazzライブを行う店では、ミュジックチャージとかそれに類する名目で、場代を支払う。JAMセッションでは、アマチュアが集うのだが、アマチュアだけだと音が組み立てられないということも多々あるので、ピアノ、ベース、ドラムなどの基本構成は、プロが受け持つ。 アマチュアは、サックスやトランペット、あるいはギター、ボーカルなどで、部分的に参加する形となる。そのため、ミュージックチャージは、1500円と安くなっている。 ただし、お店の方でも、そのままでは店が成り立たないから、飲み物一品、食べ物一皿をお願いしている。それらを合わせてもかなり安い。 私を含めて何人かアマチュア・ジャズシンガーが歌い終わったころに、学生か、もしかすると社会人かもしれないが、一人の青年がトランペットの収納ケースを抱えて、店に入ってきた。 初めての方なので、店の方が、ミュージックチャージ等について説明する。 ここで、問題が起きた。なんと、その青年、1500円しか持ってきていないというのである。店の従業員は、自分の一存では、この青年をどう扱うか決められないため、店長を呼んだ。 店長は、従業員の説明を聞いた後、おもむろに、ミュージックチャージだけでいいんじゃない、と事もなげに従業員に言った。そのあと、テーブルに何もないとかわいそうだからといい、従業員にコーヒーを運ぶように指示した。 青年は、そのあと、プロの面々に囲まれながらも、都合5、6曲は吹いて帰って行った。 このことは、たまたま傍にいて小耳にはさんだ私と店の関係者しか知らない。私は、後日、店長に尋ねてみた。どうして、ミュージックチャージだけでよいとされたのですか、と。 すると、店長いわく、いやあ、このご時世だから、そういうお客も拾っていかないと店はやっていけないよ、と、のたまう。一面の真理もあるが、私は、店長の一流のテレも入っているとみた。 このお店は、お客はよく入る店である。お客が来なくて困るような店ではない。 また、決して、その青年に将来性を見出したとか、ということでもない。思うに、店長は、根っから音楽が、そして人が好きなのである。私の睨みは、たいてい外れるが、この睨みは外していないと確信する。 そういう店長だからこそ、お客さんがよく入るし、リピーターになる。 久しぶりに、いい場面を見せてもらった。 なお、お店の名前はFarout、店長とは、村尾陸男さんその人である。ピアノを弾かれ、ジャズ詩大全という総頁で5000頁を超える素晴らしい本の執筆者として名高い。店は、横浜の関内駅の南口からあるいて5分のところにある。温かいJazzの店である。 |
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